診療内容

治療法紹介

光線力学的療法(Photodynamic Therapy: PDT)について

慶應義塾大学病院では、悪性神経膠腫などの原発性悪性脳腫瘍に対して、PDTによる治療を行っています。

概要

神経膠腫に代表される原発性脳腫瘍の多くは、周囲の脳組織に浸み込むように発育する浸潤性腫瘍です。脳腫瘍の治療においては、手術で最大限の摘出を行うことが重要ですが、脳機能を温存するために、摘出腔周囲には浸潤腫瘍細胞が残存することが少なくありません。これらの残存腫瘍細胞は、再発の原因となります。
PDTは、このような摘出腔周囲や摘出困難な部位に残存する腫瘍細胞を、可能な限り正常な細胞を傷つけることなく、選択的に治療する方法です。
この治療は、術中に開頭した状態で、腫瘍の摘出後に連続して行い、腫瘍の残存が疑われる部位に対し、レーザー光を照射することにより行われます。
PDTは、早期肺癌、遺残再発食道癌にも使用されますが、原発性悪性脳腫瘍に対しては、2013年9月に薬事承認、2014年1月に保険収載されました。

作用機序

PDTでは、腫瘍に選択的に蓄積する光感受性物質である、タラポルフィンナトリウム(レザフィリン®)を使用します。手術の前日にレザフィリンを患者さんに投与し、手術中(腫瘍摘出後)にレーザー光を照射することで、レザフィリンが蓄積した腫瘍細胞で光化学反応が惹起されます。この化学反応により発生した一重項酸素(ROS:reactive oxygen species)の強い酸化作用で細胞が選択的に変性・壊死します。

注意点(遮光管理)

光線過敏症などの副作用の可能性があるため、投与から約2週間は、500ルクス以下の環境を保持する目的で遮光管理が必要となります。具体的には、サングラスや帽子などを着用して頂き、目などの粘膜や皮膚に強い光が当たらないように生活をして頂きます。約2週間経過した時点で、光線過敏試験を施行し、問題がなければ遮光管理を解除し、日常生活に戻って頂きます。

術中所見
術中所見。腫瘍摘出腔にレーザー光を照射している(青矢印)。
すでに照射を終えた部位は遮蔽されている(黄矢印)。