経鼻内視鏡頭蓋底手術

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CLINICA

頭蓋底腫瘍に対するチーム医療
-経鼻内視鏡頭蓋底手術について-

当科には、頭蓋底(頭の骨の底)に発生し、治療が難しい腫瘍に対する新たな開頭手術法を開発し、世界の頭蓋底外科を先導してきた伝統があります。その実績を基盤に、最新の神経内視鏡手術(経鼻内視鏡頭蓋底手術)を導入し、低侵襲手術(体に負担がかからない術式)の技術開発を重ね、従来の手術成績を大きく向上させてまいりました。さらに、大学病院の特性を活かして、診療科の枠を超えたチーム医療体制を構築し、頭蓋底疾患に対する安全で質の高い治療を実践しています。

経鼻内視鏡頭蓋底手術

経鼻内視鏡頭蓋底手術とは?

経鼻内視鏡頭蓋底手術とは、鼻孔から内視鏡と器具を挿入し、頭蓋底の腫瘍を取り除く低侵襲な術式(体に負担がかからない術式)です。手術操作は鼻孔から行いますので、基本的には顔や頭の皮膚に傷は残りません。脳への影響が最小限であること、術後の回復が早いことも長所です。また従来の顕微鏡では死角となっていた部位も内視鏡で見えるようになり、さらに手術による病気の治癒を目指せるようになりました。本手術方法は、頭の骨の底(頭蓋底)に発生する下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫、髄膜腫、脊索腫、ラトケ嚢胞などの手術治療に用いられます(図1)。

應義塾大学病院の経鼻内視鏡手術の特色
~耳鼻咽喉科と脳神経外科とのチーム手術~

基本的に鼻内の操作は耳鼻咽喉科医が行い、頭蓋内の操作は脳神経外科医が行います。特に本手術では内視鏡操作が重要です。手術の進行に合わせて常に明瞭な手術野を確保し、また手術操作を中断することなく出血などの状況に即座に対応するためには耳鼻咽喉科医と脳神経外科医が共同で手術することが必要不可欠です。耳鼻咽喉科医と脳神経外科医の知識と経験を融合することが、手術時間の短縮および安全性の向上につながっています。

手術方法、手術後の入院治療

手術に用いる内視鏡は直径4mm、長さ18cmで、光源装置とビデオカメラ(ハイビジョン画質)に接続されます。手術野はテレビモニターに映し出されることで明るくかつ拡大されるので精細な手術操作が可能になります。
まず耳鼻科医が内視鏡下に鼻副鼻腔の粘膜や骨を切除し、鼻孔から腫瘍近くを最短距離で結ぶ"トンネル"をつくります。その後、耳鼻科医は内視鏡操作に専念し、脳外科医は"トンネル"を介して、吸引管や器具を入れて手術を続けます。多くの場合、腫瘍付近の頭蓋底骨を削り、硬膜を切開し、腫瘍を摘出します。脳脊髄液が漏れた場合は、脂肪や筋膜などを充填して漏れを止めます。さらに頭蓋底の欠損部を鼻中隔の粘膜弁で塞ぐこともあります(頭蓋底の再建)。最後に副鼻腔をスポンジやガーゼでパッキングし、再建に用いた材料をしっかり固定し手術を終えます。
ガーゼなど鼻内のパッキングはおよそ1週間後に抜きます。入院期間は腫瘍の種類や進展範囲によって異なりますが、10~15日程度です。退院後も鼻内にはかさぶた(痂皮)がしばらく付着しますので、定期的に鼻内の清掃が必要になります。約4カ月で鼻内の傷は完全に治ります。

経鼻内視鏡頭蓋底手術を行った具体例

以下に、従来は開頭手術が必要であった方、あるいは摘出が極めて困難であった方が、経鼻内視鏡手術によって腫瘍が全摘(あるいはほぼ全摘)された写真を示します。

慶應義塾大学病院の取り組み

経鼻内視鏡頭蓋底手術は革新的な低侵襲手術として急速に発展してきました。頭蓋底は脳神経外科と耳鼻咽喉科の境界領域ですから、より良い手術を行うためには診療科の枠を超えてチームで取り組む必要があります。私たちは、この手術のパイオニアである米国ピッツバーグ大学から、テクニックはもちろんチーム医療全般について学んできました。慶應義塾大学病院では2008年秋から本格的にこの手術を始めましたが、鼻の中が狭い患者さんや再発腫瘍の患者さんに対しても、私たちの手術が安全で有効であることを示してきました。2019年までに、我々のチームで行った本手術は622件となっています(図8)。

最後に

ほとんどの患者さんは病気が発見された後に、私たちの外来を紹介受診されます。脳神経外科外部リンクと耳鼻咽喉科外部リンクが互いに連絡を取りながら手術日を調整し、細かな術式を検討します。
上述の対象疾患が発見されて手術を迷われている患者さんは、ぜひ画像や診療情報提供書(紹介状)をお持ちになって、当院の脳神経外科 (担当:戸田正博・植田良)もしくは耳鼻咽喉科 (担当:小澤宏之)の外来を受診して下さい。時間をかけて説明を聞きたいという患者さんは、セカンドオピニオン外来の受診をお勧めします。

頭蓋底センター

頭蓋底疾患は手術治療が難しいことが多く、その治療は限られた施設でしか行われていません。当院では多くの頭蓋底疾患に対応できる診療体制を整えるべく、頭蓋底センターを設立しています。手術を担当する脳神経外科、耳鼻咽喉科、形成外科、眼科、歯科口腔外科、下垂体疾患では内分泌内科、さらに放射線治療科・診断科など、関連診療科の豊富な経験と高度な技術を生かしたチーム医療を実践しています。

受診を希望される方へ

外来受診については、慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」に詳細をお示ししておりますが、「予約制」、「紹介制」をとらせていただいています。

  • ・一人一人の患者さんを十分に診察、説明させていただきたく、またお待ちいただく時間を短縮するために、外来は予約制とさせていただいております。
  • ・予約の際には、ご病状を速やかに把握させていただくため、現在かかりつけの医療機関からの紹介状をお持ちいただくようお願い申し上げます(紹介制)。これまでに受けた検査(MRIやCTなどの画像検査、採血検査など)の結果もお持ちいただけますとたいへん助かります。
  • ・お手数をおかけいたしますが、かかりつけの医療機関から、下記の予約方法で本疾患・経鼻内視鏡手術担当医師の外来を予約していただきたく存じます。
  • ・本疾患・経鼻内視鏡手術の脳神経外科担当医師は
  • 戸田正博(外来:毎週火曜日/午後、毎週水曜日/午前・午後)
  • 植田良(外来:毎週木曜日/午前、第2、4、5土曜日/午前)です。

脳神経外科外来の予約方法

外来予約窓口:(電話)03-3353-1257にお電話ください。

※外来予約窓口 受付時間:月~金曜日 8:30~19:00(土曜日は17:00までの受付となります)
慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」もご参照ください。