個別化治療、ゲノム医療について

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CLINICAL RESEARCH

臨床研究について

個別化治療、ゲノム医療について

神経膠腫(しんけいこうしゅ)に対する個別化治療

脳腫瘍に対する治療方針(化学療法や放射線照射などの治療の組み合わせ、投与量、治療期間、治療のタイミングなど)は、原則として手術で摘出された腫瘍の病理診断に基づいて決定されます。従来、病理診断は組織学的診断(顕微鏡下で観察される細胞や組織の形や構造に基づく診断)を基本としていましたが、組織学的特徴が同じでも、治療反応性(放射線治療や化学療法の効果)や予後(病気の進みや経過)が相当に異なることがあり、また、組織学的診断そのものが難しい例も少なくありません。そのため、近年では、遺伝子検査も組み合わせることが重要と考えられています。

神経膠腫(しんけいこうしゅ)においては、IDH遺伝子の変異や、染色体1p19qの欠失(染色体1番短腕と19番長腕の欠失)などの遺伝子や染色体の異常が、腫瘍の組織型(神経膠腫の種類)分類に重要です。また、1p19q欠失やMGMT遺伝子のプロモーターメチル化は、神経膠腫の化学療法感受性(抗がん剤の効果)を予測する上で重要なことが知られています。当院では、特に神経膠腫に対して、IDH, 1p19q欠失, MGMTプロモーターメチル化をはじめ、神経膠腫病理診断に重要とされている遺伝子・染色体異常を先進医療として調べることにより、ひとりひとりの患者さんに最適な国際標準の治療を提供しています。また、乏突起膠腫など、化学療法感受性が比較的高い神経膠腫に対しては、化学療法による腫瘍縮小後に手術を行うことにより、機能予後、生命予後のさらなる改善を図っています。

難治性脳腫瘍に対するゲノム医療

ゲノム医療とは、癌や腫瘍の遺伝子を網羅的(もうらてき)に解析し、それぞれの癌の発生や進行に関わっている遺伝子異常(変異)を検出し、その遺伝子異常を標的として行う治療です。例えば、病理診断が同じ悪性神経膠腫でも、それぞれの腫瘍の増大に関与している遺伝子異常は様々です。それぞれの遺伝子異常を標的とすることで、より精密な個別化治療(精密医療)が可能となります。

2019年6月に、標準治療終了後の固形がん患者さんなどを対象に、網羅的ながん遺伝子パネル検査が保険適用になりました。慶應義塾大学病院は厚生労働省指定がんゲノム医療中核拠点病院です。脳神経外科では、腫瘍センター等関係部署と密接に連携し、これらの保険診療がん遺伝子パネル検査をはじめとする網羅的な遺伝子解析を、さらにはその結果に基づく精密医療を、積極的に行っています。

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