開頭手術

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CLINICA

開頭手術とは

脳が身体の中で非常に重要な臓器であることは言うまでもありません。しかしながら、脳は非常に柔らかく壊れやすいため、外から順に頭皮、筋肉(腱膜)、頭蓋骨、硬膜、くも膜、脳脊髄液、軟膜などによって何重にも包まれて保護されています。
頭蓋骨の内部に発生した疾患を手術で治療する場合には、これらの脳を保護する組織を順次開けて行わなければなりません。
これを開頭手術と呼びます。特に、脳を露出する必要がある開頭手術は、非常に繊細な操作が必要となりますので、手術用の顕微鏡を使ってミクロン(1ミリの1/1000)単位の細かい作業を行います。最近は、開頭を必要としない治療法も発展を遂げてきていますが、今でも、開頭手術は脳神経外科治療の基本かつ根幹をなしています。

開頭手術の方法(写真①)

頭蓋骨のどの部分を、どの程度開けるのか、そのためには、皮膚をどのように切開するのか、は、病気の発生した場所や拡がり方あるいは、病気の性質などによって違っています。手術前に行う様々な画像検査を十分に検討し、コンピュータによる術前シミュレーションなども駆使しながら、手術が安全に行えて、必要な範囲がすべて観察できる、ただし、大きすぎないような、最も適切な開頭範囲を症例ごとに決定します。
皮膚切開ですが、切開後にも血流が保たれるデザインをした上で、美容上の問題が可能な限り少なくなるように、切開線が毛髪で隠れる範囲に収まるよう留意します。時々患者さんに質問されますが、髪の毛については、皮膚切開を行う周囲だけを1.5から2センチ程度部分的に剃毛する方法が主流です。退院される時に、髪の毛を下ろせば(特に女性は)手術の創部は、ほとんど目立ちません。
筋肉あるいは腱膜を剥離して、頭蓋骨を露出します。頭蓋骨の内部は壊れやすい脳組織ですから、様々な安全装置が施された専用のドリルとカッターで頭蓋骨だけを切っていきます。こうして、頭蓋骨に必要最小限の窓(骨窓と呼びます)が開くことになります。 この操作のことを開頭と呼びます。
骨窓からは脳を包む膜である硬膜が見えています。硬膜を切り開くと、くも膜に覆われた脳が見えます。ここからは、病気によって手術の手順が異なりますが、一般的に、手術顕微鏡を用いたマイクロ手術(写真②〜⑥)が行われます。

安全な手術を行うための工夫

開頭手術では重要かつ複雑な機能を持つ脳に操作を加えるわけですから、いかに脳にダメージを与えず安全な操作を行えるかが最善の結果を生み出す鍵になってきます。手術顕微鏡で丁寧な操作を行うことはもちろんですが、①術中ナビゲーション(様々な画像データをコンピュータで取り込み、手術中に操作している場所を正確に知ることができます。)②電気生理的モニタリング(脳や神経が活動する際に出す様々な電気信号を感知する機器で、脳が正常に機能していることを確認しながら操作することができます。)③術中血管造影:(手術中に血流の温存や、血管病変が確実に処理されたことが確認できます。)④神経内視鏡(安易に動かせない重要な構造物の裏側なども、安全かつ明瞭に観察することができます。)などの導入で、より安全確実な手術が行えるようになりました。

閉頭の手順

病変に対する治療が終わったら、閉頭に入ります。開頭で開いていったのと逆の順番で、解剖学的に元通りに戻すことを原則とします。硬膜は、脳脊髄液が漏れてこないように、密に縫合します。人工硬膜や自己筋膜などで部分的な補填をしたり、血液製剤の糊を吹き付けたりする場合もあります。骨窓部は、取り外した頭蓋骨をそのまま戻し、ドリルで開いた孔を覆い隠すようにデザインして、チタン製のプレートで強固に固定します。筋肉、腱膜を縫合し、皮膚は医療ホッチキスで閉じて手術終了となります。

①開頭を行っています。

②顕微鏡を用いてマイクロ手術を行っています。

③ナビゲーションや電気生理的モニタリングを併用し、言語機能も含めた脳機能を温存した脳腫瘍の手術を行っています。

④から⑥は、それぞれ未破裂脳動脈瘤のクリッピング術、バイパス手術、髄膜腫摘出術です。全く出血がない綺麗な術野で、正確な操作をしています。

覚醒下開頭腫瘍摘出術について

多くの脳腫瘍では、手術における腫瘍摘出率(どのくらい腫瘍を摘出できたか)や残存腫瘍体積が患者さんの生命予後と関係することが知られています。一方、脳は、機能の温存がとりわけ重要な臓器です。
覚醒下手術とは、覚醒下(気道確保をおこなっていない状況)で行う手術で、手術中に患者さんに話しかけたり、手足を動かして頂きながら手術を行います。手術合併症を避けるため、手術中に腫瘍周辺の脳機能を調べるために様々なモニタリングが行われますが、それだけでは十分とは言えず、特に言語野(言葉を司る重要な部分)の場所は個人差が大きく、覚醒下でしか術中の確認は行えず、他の手段に替わるものがありません。解剖学的言語野あるいは運動野(手足や顔、体を動かす重要な部分)近傍の腫瘍に対し、覚醒下手術を施行することで、最小限の合併症で最大限の摘出を行うことを目的とします。

当院は覚醒下手術の経験が豊富であり、覚醒下脳手術認定施設です。

即効性静脈性麻酔薬、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔薬などにより鎮静と鎮痛を行います。

①静脈性麻酔薬による全身麻酔の下、咽頭マスクを用いて呼吸管理をして皮膚切開や開頭(頭蓋骨の一部をはずすこと)を行い、脳が露出する頃に静脈性麻酔薬を減量あるいは中止し、患者さんが覚醒後に咽頭マスクを抜去して会話可能な状態になります。

② まず、脳の機能マッピング(言語野や運動野の位置の確認)を行い、言語野や運動野と腫瘍の位置関係を確認します。脳の機能マッピングでは、術者が脳を電気刺激している間に、検者が患者さんに話しかけたり、質問したり、手足を動かすように御願いすることにより、言葉の症状や筋肉の収縮の有無、あるいは筋電図の波形などから、判断します。

③続いて、脳の機能マッピングの結果に基づいて、腫瘍摘出を行います。腫瘍摘出中も、症状のモニタリングのため、話しかけたり、手足を動かすように御願いすることがあります。

④腫瘍摘出が終了後、創部を閉じて終了するまでは、不快感に応じて再度鎮静を行います。