頭蓋咽頭腫

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TARGET DISEASE

頭蓋咽頭腫

概要

①頭蓋咽頭腫とは

下垂体は胎児の時に頭蓋咽頭管という組織から作られてきますが、通常、下垂体が作られた後には頭蓋咽頭管の不要な部分は縮小してほとんどなくなってしまいます。この本来なくなるはずの頭蓋咽頭管の一部が頭の中に残り、腫瘍になったものが頭蓋咽頭腫です。約7割は下垂体やその上にある視床下部など重要な脳に近接して発生します(図1)。小児から成人まで発生します。

概要

図1:頭蓋咽頭腫発生部位の周辺構造

②頭蓋咽頭腫の特長と問題点

頭蓋咽頭腫は良性腫瘍に分類されますが、

・脳の中で、意識や意欲、認知機能などに関係する視床下部、ホルモンの分泌に関係する下垂体、目で見た情報を脳に伝える視神経の近くに発生すること

・腫瘍がその周りの大切な組織にくっついて剥がれにくいこと

・再発することが多いこと

から、治療が難しい脳腫瘍の一つです。手術治療がうまくいったとしても、ホルモンの異常や視力・視野の障害が後遺症として残ることが多くみられます。そのため、手術治療の後の管理では脳神経外科、内分泌内科、放射線科、小児科などが協力し、各専門的知識・経験に基づいた治療を行っていく必要があります。

原因・症状

①頭の中の圧が高くなって生じる症状(頭蓋内圧亢進症状)

腫瘍によって頭の中の水(脳脊髄液)の流れが悪くなり、頭の中に水が異常にたまってしまう「水頭症」という病気を引き起こすことがあります。頭にたくさん水がたまると頭の中の圧が高くなり、頭痛や吐き気、さらに視力や意識が悪くなるなどの症状をきたします。一般的に成人よりも小児の患者さんの方が起こりやすいです。

②視床下部、下垂体の異常による症状

ホルモン調節の中枢である下垂体(図2)や視床下部の近くにできる腫瘍であるため、体の中のホルモンが足りなくなり、様々な症状を引き起こします。

甲状腺刺激ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンが足りなくなると、元気がなくなり、疲れやすくなったり、基礎代謝が悪くなって肥満になったりします。また、抗利尿ホルモンが足りなくなり「尿崩症」という尿が大量に出る症状もみられます。小児の場合、成長ホルモンが足りないと低身長になり、性ホルモンが足りず二次性徴が遅れたり生理が止まったりすることがあります。

原因・症状

図2:下垂体から分泌されるホルモン

視床下部は生命の維持にかかわる大切な脳です。視床下部が腫瘍によって傷害されると、血圧や体温が不安定になったり、体の水分や塩分のバランスが崩れたり、意識が悪くなったりします。視床下部やその近くにある乳頭体という場所の障害によって、精神症状(うつ状態、物忘れ、場所や日にちがわからなくなる認知症状)をきたすことがあります。この症状は小児よりも成人の患者さんで起こりやすいとされています。

③視力・視野の症状

視神経が腫瘍によって圧迫されると視力が悪くなり、視野が狭くなります。視野は両眼の外側(耳側)が見えにくくなることが多いです。

検査・診断

頭蓋咽頭腫では、腫瘍を同定するための画像検査(CTやMRI)が行われます。また、ホルモン分泌の障害を併発することも多いため、血液検査や尿検査にて各種ホルモンの血液濃度を測定したり、負荷試験などを行ったりします。また、頭蓋咽頭腫では視力や視野の異常を伴うこともあるため、これらを評価する眼科での詳しい検査も必要です。

治療法

頭蓋咽頭腫の治療方法は、外科的な腫瘍摘出術が基本です。

大きい腫瘍や周辺の組織に食い込んでいる腫瘍の場合には完全に取りきることが難しく、腫瘍を完全に取ろうとすると手術によって重い合併症や後遺症が出やすくなります。そのため、腫瘍を取るのは合併症が出にくい範囲にとどめ、残った腫瘍に放射線治療を施すという治療戦略がとられることもあります。

当科では、頭蓋咽頭腫が発生する場所に脳を経由せずに到達できる経鼻内視鏡手術(図2)を軸として、神経内視鏡を補助的に使用することも行って、より患者さんの負担が少なく、安全に腫瘍を摘出することを目指しています。腫瘍の大きさや場所に応じて、開頭手術を行うこともあります。

手術で取りきれなかった腫瘍や再発腫瘍に対しては、放射線治療を行います。放射線治療のうち、限られた範囲に集中して放射線を当てる方法(定位的放射線照射)を主に用います。

治療後経過

①再発率

手術で見える限り全ての腫瘍を取り除いた場合、術後5年間のうちに再び腫瘍が大きくなってくる(再発する)率は10~20%とされています。一方、全ての腫瘍を取りきるのが難しかった場合、腫瘍全体の95%を取り除いた方でも約50%、もっと腫瘍が残っている方では約60~80%で、手術後5年間のうちに再発します。つまり、わずかでも腫瘍が残っていると高い確率で再発してくる腫瘍であると言えます。手術と放射線治療を両方行った場合の再発率は25%、術後5年間の生存率は90%とされています。

②治療後の生活

頭蓋咽頭腫の治療では、手術が問題なく終わった後にもホルモン補充などの治療を続けていく必要があります。特に生きていくうえで大切な、抗利尿ホルモンと副腎皮質刺激ホルモンによって調節されるステロイドホルモンの補充が必要になることが多いです。そのほか、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモンの補充を要することもあります。

実績

頭蓋咽頭腫が発生する場所に脳を経由せずに到達できる経鼻内視鏡手術を軸として頭蓋咽頭腫に対する手術治療を行っています。当科では2008年から脳神経外科・耳鼻咽喉科で構成した経鼻内視鏡手術チームを結成し、手術を行っています(図3)。近年は、年間70例程度、経鼻内視鏡手術を行っており、治療症例数、治療成績の点で、本邦で有数の施設となっています。

実績

図3:脳神経外科・耳鼻咽喉科チームによる経鼻内視鏡手術の実績

慶應脳外科としての取り組み(特長)

当院では、大学病院の特性を活かし、頭蓋咽頭腫の治療を診療科の垣根を越えた医療チームで行っています。(頭蓋底センター

頭蓋咽頭腫の手術治療は、耳鼻咽喉科との合同チームで経鼻内視鏡手術を行っています。当院では、鼻内操作は耳鼻咽喉科医が、頭蓋内操作は脳神経外科医が行い、それぞれお互いの知識と経験を生かし、安全かつ確実な手術を行っています。


頭蓋咽頭腫の治療として、手術のほかにホルモンバランスなど内分泌機能を評価・維持することも大切です。内分泌内科と連携し、手術前に専門医による内分泌機能評価を行い、手術後も必要に応じて適切なホルモン補充を行うなどの綿密なフォーローアップを行っています。


放射線治療を要する場合には、放射線治療科と連携して治療を行うなど、関連診療科の豊富な経験と高度な技術を生かしたチーム医療を実践しています。


大きい腫瘍や周辺の組織に食い込んでいる腫瘍であることもあります。腫瘍の大きさ・発育様式により、神経内視鏡を補助的に使用することも行って、より患者さんの負担が少なく、安全に腫瘍を摘出することを目指しています。また、手術で完全に取りきることが難しく、腫瘍を完全に取ろうとすると重い合併症が出ると予想された場合には、腫瘍を取るのは合併症が出にくい範囲にとどめ、残った腫瘍に放射線治療を施すなど、一人一人の患者さんに最適な治療を行うことを心がけています。

本疾患の脳神経外科 担当医師は 

  • 戸田正博(外来:毎週水曜日 午前)
  • 植田 良(外来:毎週火曜日 午前、第2・4・5土曜日 午前)です。 
受診をご希望の患者さんへ

外来受診については、慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」に詳細をお示ししておりますが、「予約制」「紹介制」をとらせていただいています。

  • 一人一人の患者さんを十分に診察、説明させていただきたく、またお待ちいただく時間を短縮するために、外来は予約制とさせていただいております。

  • 予約の際には、ご病状を速やかに把握させていただくため、現在かかりつけの医療機関からの紹介状をお持ちいただくようお願い申し上げます(紹介制)。これまでに受けた検査(MRIやCTなどの画像検査、採血検査など)の結果もお持ちいただけますとたいへん助かります。

  • お手数をおかけいたしますが、かかりつけの医療機関から、下記の予約方法で本疾患担当医師の外来を予約していただきたく存じます。


<脳神経外科外来の予約方法>
外来予約窓口:(電話)03-3353-1257 にお電話ください。
※外来予約窓口 受付時間:月~金曜日 8:30~19:00
(土曜日は17:00までの受付となります)
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