ワクチン療法について

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CLINICAL RESEARCH

臨床研究について

ワクチン療法について

ワクチン療法

当科では、2010年から脳腫瘍に対するワクチン療法臨床試験を行っています。

このワクチン療法はどんな治療?

身体の外部からの侵入者である抗原(細菌やウイルスなど)に対して免疫細胞などが「自分」と「自分でないもの」を識別して、身体を守るしくみを「免疫」と呼びます。当科で行っているこのワクチン治療は、患者さんがすでに持ち合わせている免疫を、標的とする細胞(この場合、脳腫瘍の細胞や脳腫瘍が育つために必要な栄養血管の細胞)を特別に攻撃できる免疫に活性化する免疫療法です。
図1にその模式図を示します。標的にしたい細胞「敵」だけに発現している「目印」(VEGFRペプチド)を皮下に投与します。すると「教官」である、皮膚内に存在する樹状細胞(抗原提示細胞)がその目印をひろってT細胞に提示し、この時点では「普通の兵隊」であるT細胞を教育(活性化)します。その結果、「目印をたくさん持っている敵」(腫瘍細胞や腫瘍血管内皮細胞)を集中的に攻撃できる「特殊部隊」(活性化T細胞)が整備され、効果的に「敵」である細胞を倒せるようにする、という治療です。
このワクチン療法はどんな治療?

現在当科で行われているワクチン治療

現在、当科では以下の3つのワクチン治療の臨床試験を行っています。投与する「VEGFRペプチド」は3つの試験で共通です。対象とする疾患は、初発(再発腫瘍ではなく、最初の手術治療後にほとんどなくなっている状態の腫瘍)神経膠腫、手術治療や放射線治療後に腫瘍が再び大きくなってきている神経線維腫症2型患者さんの頭蓋内に発生した腫瘍、脊索腫、髄膜腫、血管周皮腫、血管芽腫、上衣腫です。

現在当科で施行しているワクチン治療臨床試験

① 初発悪性神経膠腫に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
② 進行性神経線維腫症2型に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン(終了。次の臨床試験を準備中。)
③ 進行・再発難治性脳腫瘍に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
※③の対象疾患: 手術・放射線治療などの有効な治療法がない、脊索腫、髄膜腫、血管周皮腫、血管芽腫、上衣腫 

※試験内容についての詳細な内容は以下のホームページをご覧ください。

<jRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)>
①初発悪性神経膠腫に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
 https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031180170
②進行性神経線維腫症2型に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
 https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031180184
③進行・再発難治性脳腫瘍に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
 https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031180162

このワクチン治療臨床試験に参加していただくまでの流れ

現在脳腫瘍の治療を受けている医療機関の担当の先生から、当科ワクチン担当医師にご紹介いただくことから始まります。以降の流れを図2に示します。
このワクチン治療に参加していただくには、治療の対象になりうるかどうか、ご年齢や病気の状態などを定められた基準に照らし合わせて判断させていただきます。対象となる場合には、血液型のように個々の患者さんで異なるヒト白血球抗原(HLA)が、このワクチン治療効果が期待できるHLAの型に適合するかどうかを検査によって判定します。検査の結果、HLAの型が適合する場合、それまで治療を担当している先生からの紹介状をいただいて、患者さんに当科の免疫療法外来を受診していただき、ワクチン治療の詳細を説明させていただきます。
このワクチン治療臨床試験に参加していただくまでの流れ

ワクチン治療の実際

はじめに、口の中を特殊な綿棒で擦って(痛みはありません)、口腔内粘膜を採取し、ヒト白血球抗原 (HLA)-A のタイプが A*2402、A*0201、A*0206、A*0207 であるかどうかを調べます。HLA のタイプが A*2402、A*0201、A*0206、A*0207 である患者さんのみに VEGFR ペプチドの投与を行います。また、HLA のタイプは、当科からHLA 研究所に検査を依頼して行った検査結果をもとに判断します。VEGFRペプチドの投与回数は疾患によって異なりますが、合計8回あるいは14回のワクチンを行います(下記の表をご覧ください)。これらの治療は原則として慶應義塾大学病院の脳神経外科外来で行います。治療期間が終了するまで、定期的に体調や臨床検査に異常がでないかどうかを調べます。また、腫瘍に対する臨床効果を見るために、画像検査(CTスキャンや MRIなどを使った腫瘍の状態を調べる検査)などを定期的に行います。 検査の種類と時期は、以下の表をご覧ください。
ワクチン治療の実際

ワクチン治療に受けていただくにあたり必要となる診療費用について

①初発悪性神経膠腫に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
試験8か月で、画像、採血、再診料含め、約50万円程度の自己負担、また臨床試験期間内の化学療法代を当院で処方する場合には自己負担となるため、約100~150万円程度の自己負担の追加が予想されます。

②進行性神経線維腫症2型に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン

③進行・再発難治性脳腫瘍に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
試験12か月で、画像、採血、再診料含め、約25~30万円程度の自己負担が予想されます。

このワクチン治療に関する学術論文

このワクチン治療の治療効果や安全性、また対象疾患をひろげる際にその科学的根拠となる研究成果について、当科から以下の学術論文として報告しています。

<各臨床試験の治療効果、安全性についての報告>
  • 再発悪性神経膠腫に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン(終了)
    Shibao et al. Oncotarget. 2016
  • 再発悪性神経膠腫に対するペプチドカクテルワクチン(終了)
    Kikuchi et al. J Clin Med. 2019
  • 初発悪性神経膠腫に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン(進行中)
    Tamura et al. BMC Cancer. 2020
  • 進行性神経線維腫症2型に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン
    (終了。次の臨床試験を準備中。)
  • Tamura et al. Nature commun. 2019
  • 進行・再発難治性脳腫瘍に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン(進行中)
<対象疾患をひろげる際にその科学的根拠となる研究>
  • Tamura et al. Exp Mol Pathol. 2020
  • Sato et al. J Clin Med. 2019
  • Kosugi et al. J Clin Neurosci. 2019
  • Morimoto et al. J Neurooncol 2019

問い合わせ先

①事務局:脳神経外科医局 ワクチン治療担当
メールアドレス: toda.group@outlook.jp
ワクチン治療担当医師:森本・田村・植田

②脳神経外科 免疫療法外来 (毎週水曜日)
外来担当医師:戸田 (森本・田村・植田)

慶應義塾大学病院 外来受診について

当院外来受診については、慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」に詳細をお示ししておりますが、「予約制」、「紹介制」をとらせていただいています。

  • 一人一人の患者さんを十分に診察、説明させていただきたく、またお待ちいただく時間を短縮するために、外来は予約制とさせていただいております。
  • 予約の際には、ご病状を速やかに把握させていただくため、現在かかりつけの医療機関からの紹介状をお持ちいただくようお願い申し上げます(紹介制)。これまでに受けた検査(MRIやCTなどの画像検査、採血検査など)の結果もお持ちいただけますとたいへん助かります。
  • お手数をおかけいたしますが、かかりつけの医療機関から、下記の予約方法で本疾患担当医師の外来を予約していただきたく存じます。
  • 本疾患の脳神経外科 担当医師は戸田正博(外来:毎週水曜日)

脳神経外科外来の予約方法

外来予約窓口:(電話)03-3353-1257にお電話ください。
*外来予約窓口 受付時間:月~金曜日 8:30~19:00(土曜日は17:00までの受付となります)
慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」もご参照ください。

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