神経鞘腫(聴神経腫瘍、三叉神経鞘腫 など)

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神経鞘腫(聴神経腫瘍、三叉神経鞘腫 など)

概要

①神経鞘腫とは?

神経鞘腫は、末梢神経を取り巻いている鞘(さや)(シュワン細胞)から発生する良性の腫瘍です。

②神経鞘腫の発生する部位

神経鞘腫は、発生した脳神経の走行に沿って大きくなります。脳神経は全部で12種類ありますが、そのうち、耳の聞こえ具合に関与する聴神経(前庭神経と蝸牛神経、多くは前者)に発生する腫瘍(聴神経腫瘍と呼ばれます)がほとんどであり、神経鞘腫の約85%を占めます。そのほか、主に顔の感覚に関与する三叉神経に発生するものなどがあります(図1)。 

原因・症状

①腫瘍が発生した脳神経が傷害されることによる症状

神経鞘腫が発生した脳神経に対応した症状やその周りにある神経の症状が現れます。聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)は耳鳴り、難聴、めまい、三叉神経鞘腫は顔の痛み、しびれ、舌因神経や迷走神経の神経鞘腫は飲み込みづらさ、しゃべりづらさ、声のかすれ、舌の動きづらさといった症状がみられます。

②腫瘍の周りにある正常の脳や脳神経が圧迫されることによる症状

腫瘍が大きくなり周りにある正常の脳や脳神経を圧迫するようになることでも症状が現れます。頭痛、吐き気、ふらつきといった症状から、物忘れや失禁といった認知症に近い症状、さらに半身の麻痺や意識の低下といった危険な症状まで起こりえます。

検査・診断

検査はCTやMRIを行います。これらの画像検査の結果から、腫瘍の形や場所、性質などを調べ、術前診断に用いたり、手術の戦略を立てたりします。また、神経が機能しているかをチェックするためにそれぞれの神経に対する電気生理検査を行うこともあります。

治療法

神経鞘腫のうち最も多い聴神経腫瘍の治療を代表例としてお示しします。

聴神経腫瘍の治療としては、①腫瘍が大きくならないこともあるため定期的に経過を観察すること、②手術で腫瘍をとること、③放射線治療で腫瘍がそれ以上大きくなりにくくすることの3つの方法が挙げられます。

①経過観察

周囲の脳をほとんど圧迫していない小さい腫瘍の場合、定期的に画像検査を行って腫瘍が大きくなるかどうかを判定します。手術や放射線治療による合併症はおこらないメリットがありますが、急速に大きくなる場合には聴力が回復しなくなったり、腫瘍が周囲の脳や神経とくっついてしまって手術が難しくなってしまうデメリットがあります。

②手術(開頭腫瘍摘出術)

腫瘍の大きさが25mm以上で周囲の脳を圧迫する大きな腫瘍、放射線治療の効果が乏しいとされる嚢胞(液体がたまった袋)成分が多い腫瘍、若い患者さんで聴力を維持できる可能性がある小さい腫瘍に対して手術を行うことが考慮されます。腫瘍をある程度なくすことができるメリットがありますが、腫瘍の近くにあって圧迫されている脳(脳幹、小脳)や脳神経(顔の動きに関与する顔面神経、飲み込みなどに関与する脳神経)の障害が後遺症として起こりうるデメリットがあります。

③放射線治療

放射線治療のうち、限られた範囲に集中して放射線を当てる方法(定位的放射線照射)を主に用います。放射線治療では、腫瘍を減らすことはできず、腫瘍がそれ以上大きくなりにくくすることが目標となります。高齢の方など手術を受けるにあたり危険性が高い患者さん、大きくない腫瘍、手術を行った後に再発した腫瘍に対して選択されます。顔面神経麻痺や聴力障害の発生が比較的少ないことがメリットですが、放射線治療後に腫瘍が大きくなる場合には手術が難しくなることがデメリットです。

聴神経腫瘍の治療は、患さんの年齢、腫瘍の大きさ、症状(特に聴力)などを評価して、各治療法のメリット・デメリットを考慮して患者さん一人一人に最適な方法を選択することが大切です。

治療後経過

神経鞘腫(例として聴神経腫瘍)の治療の流れを図1に示します。

経過観察を行う場合は3ヶ月後にMRI検査を行って腫瘍が大きくなっていなければ次はその6ヶ月後に検査、さらに1年後に検査というように腫瘍の変化や症状の推移を評価します。

手術を行う場合、手術のための入院期間は約2週間です。術前検査として1~2日間、手術後、通常翌日から歩行可能となり、適宜採血検査や画像検査を行って、術後10日から2週間程度で退院です。

治療後経過

図1:聴神経腫瘍の手術治療後の流れ

慶應脳外科としての取り組み(特長)

脳神経外科では、脳神経が頭蓋骨の穴を通って頭の外に出て行くまでの区域に生じた神経鞘腫を対象としているため、神経鞘腫は頭蓋の底に接することが多い頭蓋底腫瘍です。当科には、頭蓋底腫瘍の経頭蓋(開頭)手術法を先駆けて開発し、世界の頭蓋底外科を先導してきた伝統があります。その実績を基盤に、最新の技術開発を重ね、頭蓋底腫瘍に対する従来の手術成績を向上させてまいりました。

さらに、大学病院ならではの診療科の垣根を越えたチーム診療体制を構築し、頭蓋底疾患に対する安全で質の高い治療を目指しています(頭蓋底センター)。神経鞘腫の治療として、手術のほかにも放射線治療を行って腫瘍の成長を抑えることも選択肢となります。放射線治療科と連携して放射線治療の必要性を十分に検討したうえで治療を行い、治療後も綿密なフォーローアップを行うなど、関連診療科の豊富な経験と高度な技術を生かしたチーム医療を実践しています。

当科では、手術や放射線治療を行っても再発してしまった治療が難しい神経鞘腫に対して、患者さんの免疫を神経鞘腫の腫瘍細胞や腫瘍血管に対して特別な免疫になるように活性化する免疫療法「進行・再発難治性脳腫瘍に対するVEGFR1/2ペプチドワクチン」の臨床試験を行っています。詳しくは当科ホームページの「ワクチン治療」をご覧ください。

受診をご希望の患者さんへ

外来受診については、慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」に詳細をお示ししておりますが、「予約制」「紹介制」をとらせていただいています。

  • 一人一人の患者さんを十分に診察、説明させていただきたく、またお待ちいただく時間を短縮するために、外来は予約制とさせていただいております。

  • 予約の際には、ご病状を速やかに把握させていただくため、現在かかりつけの医療機関からの紹介状をお持ちいただくようお願い申し上げます(紹介制)。これまでに受けた検査(MRIやCTなどの画像検査、採血検査など)の結果もお持ちいただけますとたいへん助かります。

  • お手数をおかけいたしますが、かかりつけの医療機関から、下記の予約方法で本疾患担当医師の外来を予約していただきたく存じます。


<脳神経外科外来の予約方法>
外来予約窓口:(電話)03-3353-1257 にお電話ください。
※外来予約窓口 受付時間:月~金曜日 8:30~19:00
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