脳を覆う硬膜と脳との間に袋状にじわじわと出血がたまります。出血で脳が圧迫されることにより症状が出ます。
頭をぶつけた数週間から数ヶ月後にたまってくることが多いです。正確な原因はわかっていません。中年以降のご高齢の方やお酒飲みの方に多いとされていますが、女性、子供にも起こり得ます。血液をサラサラにするお薬を飲んでいると発症率が高まるという報告が多いです。頭痛や軽い運動麻痺が多く、ふらつきや歩いていてどちらかに傾いてしまうなどの症状が認められます。認知症、性格変化などでみつかることもあります。
袋の中にドロドロとした固まらない液体の血液が“慢性”に(“急性”の逆で、ゆっくりと徐々に)たまるのが特長です。血腫が比較的しっかりとした膜で覆われており、脳自体に損傷があることはまれです。頭部CTやMRIで診断を行います。脳と頭蓋骨の間に三日月状の血がたまり、脳が圧迫され“脳のシワ”が見えづらくなっているのが特長的です。
穿頭血腫ドレナージ術:頭蓋骨に約1cmの穴を開け、硬膜と血腫の膜を切ると、さらさらした血液が流出してきます。この血のたまりの中に細い管を挿入します。ほとんどの場合は局所麻酔で、手術時間は20~30分程度です。挿入した管から血腫が徐々に流れ出てきます。管は一晩留置し、翌朝頭部CTで血腫の減少を確認し抜去します。
ほとんどの患者さんは症状が改善し1週間程度で退院できます。約10%で再発を認めるとされています。特に血液をサラサラにするお薬を飲んでいる場合や高齢者では再発率が高いとされています。
近年では慢性硬膜下血腫に対する血管内治療の有効性も示されています1-5。再発例や手術リスク・抗血栓薬中止リスクが高いと考えられる症例を中心として、カテーテルによる塞栓術も行っております。
参考文献
1. Ban SP, Hwang G, Byoun HS, et al. Middle Meningeal Artery Embolization for Chronic Subdural Hematoma. Radiology. 2018;286(3): 992-999. https://doi.org/10.1148/radiol.2017170053.
2. Link TW, Boddu S, Paine SM, Kamel H, Knopman J. Middle Meningeal Artery Embolization for Chronic Subdural Hematoma: A Series of 60 Cases. Neurosurgery. 2019;85(6): 801-807. https://doi.org/10.1093/neuros/nyy521.
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5. Kan P, Maragkos GA, Srivatsan A, et al. Middle Meningeal Artery Embolization for Chronic Subdural Hematoma: A Multi-Center Experience of 154 Consecutive Embolizations. Neurosurgery. 2021;88(2): 268-277. https://doi.org/10.1093/neuros/nyaa379.
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