頭部打撲を来した際に起こる脳震盪よりも脳の構造そのものに損傷を受けるためより深刻です。
主な原因は自動車の衝突や頭部打撲と言われています。
衝撃が加わった側に損傷が加わるだけでなく、脳は脊髄液という水の中に浮かんでいるため反動で対側の骨にも当たり、そちらも損傷を受けることがあります(コントラクー外傷)。脳挫傷は外傷を受けてから数時間~数日かけて拡大することがあり、損傷を受けた部位に応じて脳機能の低下が出現します。
小さな損傷の場合には症状が現れないか、もしくは軽症頭部外傷に類似した症状のみの場合もあります。しかし、ダメージを受ける場所によっては手足の麻痺や思考能力の低下、発語困難などの重篤な神経障害が出現することがあります。また、損傷の程度がひどい重症頭部外傷になると意識が悪くなって混乱したり、最悪の場合、意識不明に陥ることがあります。
脳の損傷を確認するため頭部単純CTを施行します。
図3は脳挫傷の頭部CTの結果です。脳そのものに損傷を受けており、脳がダメージを受けるとともに脳内の出血がみられます。脳の正常構造が分かりにくくなるほど周囲を圧迫している様子が見られます。このような重篤な脳挫傷を来している場合に早期の検査・治療が必要となります。
脳の損傷が小さく、神経所見も概ね問題ない場合は手術はせずに保存的に経過観察入院をします。損傷の程度は遅れて広がることがあり、入院中は慎重に経過を見る必要があります。
脳挫傷が大きい場合には開頭手術を行い、損傷を受けた脳実質を除去して正常の脳を助ける処置を行います。損傷を受けた周囲の脳も一時的に腫れてくることがあり、頭蓋骨の中の圧に耐えられないと判断した場合には追加で骨を外して脳の圧力を外側に逃がす手術(外減圧)を追加することがあります。ただし、このような外科的処置により損傷を受けた脳の機能が戻ることはなく、あくまでも命を助けるために行うことを主眼においた処置となります。
症状が軽症で且つ経過観察入院にて問題ないと判断した場合には外来にて経過を見ていくことになります。症状(麻痺等)が残存したり、重篤な後遺症が残った場合にはリハビリを行うなどの対応を行いながら入院にて治療を継続し、自宅退院を目指せる場合にはリハビリテーション病院への転院を検討する場合があります。
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