海綿状血管腫

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TARGET DISEASE

海綿状血管腫

概要

脳の中に発生する流れの遅い、海綿状に膨らんだ異常血管の塊を海綿状血管腫といいます。発生頻度は人口の約0.5%程度といわれています。大脳、小脳、脳幹いずれの部位にも発生します。多くはサイズが小さく、無症状ですが、時に出血を起こして増大し、てんかんや周囲への圧迫の症状を出すことがあります。出血は多くの場合大出血にはなりませんが一度出血をすると再出血をしやすく(再出血率 年間 0.7~6%)、症状が悪化しやすくなります。

原因・症状

全体の8割程度は孤発性であり、血管腫の数は通常1か所で遺伝性はありません。この孤発性の海綿状血管腫の多くに静脈奇形(venous malformationないしdevelopmental venous anomaly)を合併することから、静脈奇形と海綿状血管腫の発生の間には関連性があると考えられています。

一方で全体の2割程度は家族性・遺伝性の海綿状血管腫です。家族性の場合には脳内に海綿状血管腫が多発しやすいことが知られています。遺伝形式は常染色体優性遺伝、すなわち遺伝子を持つ親の子供は1/2の確率でこの病気をもちます。遺伝子には3種類 CCM1(Krit 1)、CCM2(Malcavermin)、CCM3(PDCD10)があることが知られています。

症状は血管腫が発生する部位によって異なります。大脳に発生する場合、運動麻痺、てんかん発作、しびれ、しゃべりづらさなどの症状を出します。小脳に発生する場合は、バランス障害、歩行障害、しゃべりづらさなどが起こりえます。脳幹に発生する場合には、運動麻痺、しびれ、物が2重に見える、飲み込みづらさ、しゃべりづらさ、顔の麻痺などが起こることが多いです。

検査・診断

頭部CTおよびMRIにて診断がなされます。

頭部CTでは出血を伴う円形に近い腫瘤(図1)として観察されます。造影CT検査を行うと、海綿状血管腫の近くに静脈奇形(図2 矢印)を認めることが多いです。

頭部MRIではやはり楕円ないし円形に近い腫瘤として認められます。出血を繰り返している血管腫では時期の古い血液と新しい血液が混在するため、まだら模様に見えることがあります(図3)。出血急性期には周囲の脳浮腫を伴うことがあります。海綿状血管腫を最も鋭敏に検出するのが、SWI(Susceptibility-weighted imaging)という撮影法で、小さな海綿状血管腫や近くの静脈奇形を共に描出できます(図4)。

家族性の海綿状血管腫が疑われる際には遺伝子検査を行うこともあります。

検査・診断

治療法(手術)

海綿状血管腫はほとんどの場合出血をすることにより症状を出します。また一度出血を起こすと、再出血しやすいことも知られています。ただし、脳幹や大事な機能を持つ脳の近くにある海綿状血管腫を摘出する際には、術後合併症が懸念されます。

このため、たまたま発見された無症状の海綿状血管腫では手術をせずに経過を見ていくことが多くなります。

出血を起こし、症状のある(症候性)海綿状血管腫では手術による摘出を考慮します。摘出による合併症発生リスクが高い場合には手術をすべきかどうか、慎重に検討を行います。特に脳幹に発生し、出血をした海綿状血管腫は、再出血しやすいですが、手術リスクも高いため、出血を繰り返す(2回以上)際に手術治療に踏み切ることが多くなっています。また普段は症状がなくても、けいれん発作を繰り返し、その原因が海綿状血管腫にあると考えられる場合にはてんかん発作を抑えるための手術を行うこともあります。

手術を行う際には、出血を起こした海綿状血管腫全体を摘出する必要があります。手術方法は他の脳腫瘍に対する開頭摘出術と基本的には同じです。

ただし、血管腫周囲に存在する静脈奇形は損傷すると静脈性合併症を引き起こす可能性があるために、温存する必要があるといわれています。また症状が強い場合には出血を起こした直後に手術を行うことがありますが、待機可能な際には出血をある程度時間がたち、脳の腫れが改善し、血腫を吸いやすい時期の方が摘出が効果的であることもあり、手術時期についてはケースバイケースです。

手術以外の治療方法としては、定位放射線照射がありますが、こちらは手術を上回る安定した成績が出ているとはいえず、手術不可能な際に検討することとしています。

海綿状血管腫の出血予防に有効な薬物はまだ実用化はされていません。一方で、血管腫が原因でてんかん発作を起こしている場合には、有効な抗てんかん薬は多数ありますので、適切なものを選択します。

治療後経過

手術後に血管腫が残存する場合、手術をしない場合には、定期的に経過観察をする必要があります。原則的にMRI検査を定期的に行います。手術後もてんかんを起こす可能性のある場合には抗てんかん薬を継続して内服します。

慶應脳神経外科としての取り組み(特長)

当科は脳幹や運動野など重要な部位に存在する海綿状血管腫の摘出術を数多く行ってきた実績があります。

海綿状血管腫の治療に対しては、下記の工夫を行い、良好な成績をおさめています。

・手術前にできる限りの検査(錐体路トラクトグラフィー、機能的MRIなど)を行い、血管腫周囲の重要な脳機能を確認している

・静脈奇形と海綿状血管腫の位置関係を正確に評価し、手術時に血管腫は摘出、静脈奇形は温存するよう努めている

・ニューロナビゲーションを用いて正確に血管腫の位置を同定している

・手術中には必要に応じて神経機能モニタリング(運動機能、感覚機能など)を行い、脳機能を温存しながら摘出を行っている

文献

脳卒中治療ガイドライン. 2015 / 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会編

東京 : 協和企画, 2015.6

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