脳動脈解離とは、何らかの誘因で脳動脈の血管壁の中に出血し、動脈壁が裂けた状態です。脳動脈解離によってくも膜下出血を生じたり、一過性の脳虚血発作、脳梗塞といった虚血性の症状を来たすことがあります。頭痛以外の神経症状を認めない場合もあります。前頭葉や側頭葉に血流を送る頸動脈系のほか、小脳や脳幹に血流を送る椎骨・脳底動脈系(後方循環)にも生じることがあり、本邦では後者のうち頭蓋内椎骨動脈解離が多くなっています。頭痛のみを認める症例では患側の後頭部に限局した突然の強い頭痛を訴えることが多いです。
外傷性のものや、大動脈解離が頸動脈まで進展したものがあります。また、原因の特定が困難な特発性の脳動脈解離も存在します。
突然の場所が限定された強い頭痛を認めることが多いです。くも膜下出血を生じた場合には意識障害を来したり生命の危機に瀕する場合があります。脳梗塞を起こした場合には脳梗塞の局在により、麻痺やめまい、呂律障害、意識障害等多彩な症状を呈します。
血管形態の変化をとらえる必要がありますので、完成した脳卒中を認めない場合単純CTでの診断は困難です。最も簡便なのはMRIで血管形態(MRA)を評価する(pearl and strings:“真珠の首飾り”と呼ばれる数珠状に形態変化した椎骨動脈が認められます)ことですが、ご高齢の患者さんの場合時に動脈硬化性の変化と判別が困難な場合があります。この場合特殊なMRIの撮像法で動脈壁内の血栓を確認したり、外径を確認(MRAは血流がある部分のみ映ります)したりします。精密検査としては必要に応じて造影剤を使用した3DCTAや脳血管撮影を追加します。
くも膜下出血を起こした場合、特に発症後早期に再出血するリスクが高いとの報告があり急性期に手術を行います。血管内治療ないし、開頭術を行い裂けてしまった血管を閉塞します。裂けた血管を閉塞することで広範囲な脳梗塞が生じることが懸念される場合には予めバイパス手術を行って迂回路を作っておくか、ステントという金属の支えを併用して避けた部分の血管のみのコイル塞栓を行って治療をします。
脳卒中を生じなかった場合でも、脳動脈解離を起こしてからしばらくは解離が進展することで脳卒中を来たしたり、反対にリモデリングといって自然に修復されていくことがあります。これらの変化を捉えて、くも膜下出血のリスクが高いと判断すれば予防的に手術をお勧めする場合もあるため、発症後しばらくは、MRI等で頻回に血管形態の評価を繰り返します。
当科ではくも膜下出血を生じた場合の外科的治療、頭痛発症の場合の保存的加療を担当しております。
外来受診については、慶應義塾大学病院のホームページ内の「初めて受診する方」に詳細をお示ししておりますが、「予約制」「紹介制」をとらせていただいています。
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