もやもや病

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TARGET DISEASE

もやもや病

概要

もやもや病は両側の内頸動脈が頭の中においてその終末部で前大脳動脈と中大脳動脈という2本の血管に分かれる部分における狭窄とその付近から発達する異常血管網という血管形態の特長により定義される疾患です。異常血管網が煙草の煙のようにもやもやしていることから名づけられた「もやもや」という名称が世界中で使用されている、本邦で最初に報告された東アジアに多く見られる疾患です。当科の初代教授の工藤達之教授は1966年に本疾患を「ウィリス動脈輪閉塞症」と命名し、精力的に治療をされていました。

本疾患は人口10万人に対し発生率は0.05人程度とされる稀な疾患で、男女比は1:1.8で女性に多く、よく発症する年齢には10歳以下を中心とする若年型と30-40歳前後の2つのピークが見られます。もやもや病の原因は現在に至るまで明らかになっていませんが、家族発症は全体の10 %程度で、遺伝的関与が指摘されてきました。近年RNF213という遺伝子の多形が東アジア人のもやもや病と強い関連を認めることが明らかになっています。厚生労働省より難病に指定され、原因や治療法の研究が精力的に進められている疾患です。

症状

症状は脳ドック等で偶然に明らかになる無症候性の場合から一過性ないしは永続する脳神経の障害で明らかになる場合まで多岐にわたります。小児の場合は脳への血流が足りないことで生じる脳虚血症状が大半を占めます。成人例でも脳虚血症状で発症する例がある一方、30~40%の患者さんで頭蓋内出血を生じます。

これはもやもや病による動脈閉塞に伴って代償性に発達した脆弱な血管が破れることによって生じます。症状によって脳虚血型(一過性の脳虚血型、脳梗塞型)、脳出血型、てんかん型、無症候型などに大きく分類されます。無症候型では頭の中の動脈の狭窄に伴って他の血管から迂回路が形成されて(側副血行路)症状を出さないまま病期が進行することもあります。

診断

血管形態の特長により定義される疾患ですから診断上、脳血管造影などの画像診断は必須であり、少なくとも頭蓋内内頚動脈終末部を中心とした領域に狭窄又は閉塞がみられること、およびもやもや血管(異常血管網)が動脈相においてみられる所見が診断に必要となります。

また、もやもや病は現在に至るまで原因不明の疾患であり、上記に類似する血管形態を呈していても動脈硬化や自己免疫疾患等が原因の病変は除外されます。

以前は脳血管撮影というカテーテル検査を行わないと確定診断として認められませんでしたが、現在は両側病変であれば定められた要件を満たした撮像法のMRIでも確定診断として認められ、当科でも条件に合致すればMRIでの診断が可能です。

治療

一過性の脳虚血発作や脳梗塞、脳出血を起こした直後は血圧コントロールや頭蓋内圧亢進に対する治療等の内科的治療をまず行います。脳虚血発作に対しては外科的に頭皮を栄養する血管を頭蓋内へ誘導し吻合、バイパスを作成する浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術(直接血行再建術)や、筋肉や硬膜、骨膜といった血流が豊富な組織が虚血脳に直接触れるようにする(間接血行再建術)等の血行再建術が有効ですが、虚血性の症状を呈したばかりで弱っている脳を触れることで脳虚血を助長することを避けるため、脳の状況が落ち着いた慢性期に行うことが多いです。

本邦における最近の頭蓋内出血例における検討から直接血行再建術又はそれを含む複合血行再建術(直接血行再建術と間接血行再建術の両方を一度の手術で行う術式で当科でも成人に対する標準的な術式としています)は脳出血再発予防効果があることが明らかになっています。


図:左直接血行再建術前(左)と後(右)のMRI(silent MRI)。
直接血行再建で繋いだバイパスと間接血行再建からの新生血管の両方が良く発達しています。

経過

血行再建術(特に直接血行再建術)後には血流が急に増えることによる過灌流症候群、また、血流が増えた場所の隣接領域の脳虚血が生じるwatershed phenomenon等血流が落ち着くまでの7-10日程度は一過性の多彩な神経症状を呈し、適切に対処しないと脳出血や脳梗塞を生じることがあります。

当科では術後の脳の状態を最良の状態に保つため種々の薬剤を使用したり細かな血圧管理を行っております。頭皮の血管を頭蓋内へ入れるため、創部の抜糸までの期間は他の脳外科手術に比べて長めにみています。また、進行性の疾患であるため、術後も継続的にご通院いただき、経過を見させて頂いております。


図:右バイパス前(右)と後(左)の脳血流(SPECT)。
血流の改善が認められ、しびれ、脱力の症状も消失しました。

慶應義塾大学病院での取り組み(特長)

当科ではもやもや病の治療に力を入れて取り組んでいます。術前にはそれぞれの患者さんの症状と脳循環の状態(SPECTという血流検査を行います)と血管構築(脳血管撮影やMRI、CTを行います)を検討し、内科的治療の継続も含め外科的治療の必要性を評価します。血行再建術に際しては脳循環の改善を得るための有効な術式を選択するとともにその栄養血管がバイパスのドナーとして使用されるために血流が不足する頭皮に関しても愛護的な手術プランを検討します。

血行再建術後には血流が急に増えることによる過灌流症候群、また、血流が増えた場所の隣接領域の脳虚血が生じるwatershed phenomenon等血流が落ち着くまで一過性の多彩な神経症状を呈し、適切に対処しないと脳出血や脳梗塞を生じることがあります。当科では術後の脳の状態を最良の状態に保つため種々の薬剤を使用したり細かな血圧管理を行っております。

当科で本疾患に関して下記の報告を致しました。

1. Relationship between ischaemic symptoms during the early postoperative period in patients with moyamoya disease and changes in the cerebellar asymmetry index. Takahashi S, Horiguchi T. Clin Neurol Neurosurg. 2020 Oct;197:106090.

2. Hemodynamic stress distribution identified by SPECT reflects ischemic symptoms of Moyamoya disease patients. Arai N, Horiguchi T, Takahashi S, Nakahara T, Akiyama T, Jinzaki M, Yoshida K. Neurosurg Rev. 2020 Oct;43(5):1323-1329. doi: 10.1007/s10143-019-01145-w. Epub 2019 Aug 23.

3. A case of moyamoya disease symptomatized early after nivolumab initiation - Possible association between immune checkpoint inhibitors and moyamoya disease. Takahashi S, Matsui Y, Kubo H, Toda M. Clin Neurol Neurosurg. 2021 Jan;200:106355. doi: 10.1016/j.clineuro.2020.106355. Epub 2020 Nov 2.

4. Delayed reopening of a superficial temporal artery to middle cerebral artery bypass graft occluded by a white thrombus during surgery. Takahashi S, Yoshida K. Surg Neurol Int. 2020 Aug 1;11:220. doi: 10.25259/SNI_235_2020. eCollection 2020.

ご不明点など、下記お問い合わせフォームに直接ご相談いただけますと幸いです。

本疾患の脳神経外科 担当医師は 
高橋 里史
外来:(毎週火曜日 午前 金曜日 午前)です。

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